建築構法は、その環境に応じて形成されていくものである。建築構法にとって広義の意味での環境は自然環境と社会環境に分けられるが、これはそれぞれ自然風土と社会的文化的状況に対応する。建築構法が自然風土(気候・植生・地勢等)に大きく左右されることは、これまでの筆者らの研究によってもある程度明らかにされているが、本研究ではサンプルをより広く抽出し、より客観的に、計量的な手法も導入しながら、構法の各要素に自然風土の各要素がいかなる影響を及ぼしているかを研究した。 方法としては、構法に様式性を認め、いくつかの基本構法様式を設定し、材料と形態の分類を加えて、計31の構築要素とする。自然風土としては、気候・植生・森林率をそれぞれ分類し計27の環境要素とする。一定のルールによって抽出した2000余りのサンプルを、等積緯度平行の世界地図上に、等積正方形のグリッドを切ってプロットしながら、上記各要素にしたがって分類したデーターを作成し、地図上の分布図と多変量解析とによって構築要素と環境要素との相関を考察する。分布図及び計量的解析結果はここでは示し得ないが、材料と森林率との相関が極めて高く、建築構法にとって木材の存在の重要性を物語っている。 特定の地域を限定しての、構法の調査は、まだこれを環境との相関という点において定式化するに至っていない。今後は、地域を限定した構法の詳細な分布とその歴史的変遷、及び構法の中の特定の要素に対象を限定して、その分布と変遷、成立の条件等を探りながら、より総合的な建築様式とその環境との関係を研究していきたい。
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