1.名古屋を対象とする調査・分析 名古屋について、既に一定の成果を得ている「尾張名所図会」に「尾張名陽図会」を加え、描かれた都市景観を、現状の都市景観の中で追跡しつつ、描写対象地点とルート、描法、景観要素の諸点から分析した。これにより、名古屋の都市景観構造と都市空間構成との関連を明らかにすると共に、両図会が描かれた19世紀前半における都市景観思想の発展をも浮彫りにした。 2.東京を対象とする調査・分析 東京について、「江戸名所図会」を対象に、名古屋の場合と同様の調査・分析を行った。ここでは、都市を扇形の7エリアに区分し、景観描写から読み取れる各エリアの特性を比較することにより、地形と土地利用によって規定される都市景観構造の側面を明らかにした。 3.京都を対象とする調査・分析 京都について、「都名所図会」を対象に、名古屋の場合と同様の調査・分析を行った。ここでは、盆地の町の自然条件と共に、古代以来の都市を近世初頭に再構成した都市計画によって規定される都市景観構造の側面を明らかにし、さらに名所図会の揺籃期における都市景観思想を明らかにした。 4.大阪を対象とする調査・分析 大阪について、「浪華の賑ひ」を対象に、名古屋の場合と同様の調査・分析を行った。ここでは、地形や土地利用と都市景観構造との関連に加え、市民の価値観に規定される都市景観描写の側面を浮彫りにした。 5.4都市の比較分析 以上の結果を比較し、都市景観構造と都市空間構成がどのように関連しているか考察し、さらに各都市の景観特性とそれを捉える景観思想との結びつき方を探った。
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