研究概要 |
昭和61年度においては、前年の東日本にひきつづき、西日本の各府県立図書館等に出向き、建築規制に関する地方令規の収集を行なった。東日本で残っていた北海道へは今年度に出向き資料の収集を行なったため、日積および予算上の関係で中国地方の五県(山口,広島,島根,鳥取,岡山)が未調査として残っている。来年度予定の北陸三県および東日本で未調査および調査残のある四県を含め、合計十二県が現在では未調査である。 前年度と同様であるが、沖縄,鹿児島,高知,福岡等は戦災によって、県立図書館における明治・大正期の資料がほとんど失なわれており、各県庁の文書課や、高知県のように村役場の資料によって、数少ないながら、収集できたものもある。 資料が膨大な数になるため、未だ細かい整理・分析はできていないが、建築規制の内容として(1)現在の公害(悪臭等)防止のための立地規制(屠場化製場,墓地等),(2)衛生上の規制(病院,便所,湯屋等),(3)風紀上の規制(芸娼妓屋,飲食店等),(4)防火上の規制(屋上制限,火工場,製造場等),(5)軍事上の規制(舞鶴,佐世保等)が挙げられる。衛生上の規制は、明治維新の結果それまでの藩による治世が乱れたためや、伝染病の流行もあって、明治初期より中期頃までに多くみられるようであるが、社会の落ち着きとともに少なくなるようである。防火上の規制は、家屋の構造上の問題もあり、大火災があると屋上制限や煙突等について厳しい制限が行なわれた。この規制は年代的な特徴はみられず、その地方の大火との関連が大きい。(1)〜(4)で規制された単体の建築は、以降の特殊建築物となり、その規制内容が強化され物法や建基法につながっているようである。その他、大連市建築規制のような旧占領地域のものも一部収集できたが、物法施行後の地方令規の研究とともに次年度以降の課題としたい。
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