粉状クロム鉱石の各種スラグ共存下における溶融還元挙動を1550〜1650℃間の各温度で検討した。 溶融還元は(1)クロマイト粒子のスラグ中への溶解、(2)スラグ中の物質移動、(3)反応界面における還元反応等の諸過程から成る。 過程(1)は単純にクロマイト粒子の表面のみから溶解する場合(【I】)と、表面からの溶解と平行して粒子内の細孔中に溶融スラグがしみこみ内部からも溶解する場合(【II】)とに分類される。【II】はMgO/CaO比が約0.5以下でSi【O_2】が40〜60%の比較的粘度の低いスラグにおいて、一方Iはその他の液相線組成に近い粘度の高いスラグにおいて観察された。 クロマイト中のCrは【Cr^(3+)】として含まれるため、はじめは【Cγ^(3+)】として溶解し、その後【Cγ^(2+)】に還元される。Si【O_2】濃度の高いスラグでは【Cr^(3+)】は【Cr^(2+)】に還元されやすいが、塩基度の高いスラグでは【Cr^(3+)】が比較的安定で還元が遅れる。 還元速度は【II】の溶解挙動を示すスラグにおいて大きく、クロマイト粒子のスラグ中への溶解が主たる律速過程であることを示唆する。還元速度の温度依存性は1600℃を境いにして変化し、低温側では大きく高温側では小さい。これは温度の高低によって溶融還元の機構が変化するためと考えられるが、その詳細は解明できなかった。 主たる反応サイトは黒鉛粒子とスラグの接触面である。しかしクロマイト粒子の表面と長時間後には内部においてもFeの還元が一部進行する。 以上に要約したように、当初の研究目的を大半達成することができた。今後の検討課題としては、スラグ中への溶解挙動に及ぼすクロマイト組成の影響、溶解促進剤の開発、溶融還元の律速過程と温度との関係などが残されており、ひき続き研究を進める予定である。
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