研究概要 |
フッ化物を含む溶融酸化物の構造解析を行なうには、珪酸塩、アルミン酸塩の構造に関する詳細な情報が必要である。そこで本研究では初めに、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物を含む単純な2元系珪酸塩、CaO-Su【O_2】2元系に【Al_2】【O_3】あるいはTi【O_2】を含む3元系珪酸塩の急冷ガラス化試料について、アルゴンイオンレーザーを励起光とするラマン分光測定を行った。得られたスペクトルをガウス曲線を用い波形分離することにより、珪酸塩中に存在する特に非架橋酸素の数に注目した各種珪酸陰イオンの割合を定量的に求め、陽イオンの影響を検討した。更に【Al^(3+)】【Ti^(4+)】イオンの珪酸陰イオンに及ぼす影響および試料中の【Al^(3+)】【Ti^(4+)】の存在状態についても検討した。以上の結果を基に、密閉容器で溶融、急冷した、Ca【F_2】を含むCaO-Si【O_2】,CaO-【Al_2】【O_3】系試料のラマン分光測定、スペクトルの波形分離を行い、次の結果を得た。(1)CaO-Si【O_2】2元系スラグにCa【F_2】を添加すると、塩基度(NCaO/NSi【O_2】)>1の塩基性領域では単なる希釈剤として挙動し、珪酸塩構造に影響を及ぼさないが、塩基度<1の酸性領域では一部のCa【F_2】がmodifierとして挙動する。(2)酸性領域でmodifierとして挙動するCa【F_2】の比率は塩基度の低下に伴い増加する。modifierとして働くCa【F_2】は3次元網目構造を切断し、鎖状珪酸陰イオンを生成する。(3)密閉容器で溶融し、急冷した酸性領域のCaO-Si【O_2】-Ca【F_2】系試料においてSi-F結合の存在を確認し、Si-F結合に起因するラマンバンドの帰属を行った。(4)CaO-【Al_2】【O_3】2元系スラグにCa【F_2】を添加すると、Ca【F_2】は単なる希釈剤として挙動し、アルミン酸塩構造に影響を及ぼさない。
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