研究概要 |
石灰石が我が国産出の唯一の鉄鋼製錬用資源であることに着目し、その最適な製造・使用方法に関し提言することを目標に研究を実施してきた。昨年度迄の研究により、原石の結晶粒度の大きいもの(10〜100μm)は低温域焼成(900℃)でも良好な水和性試験値が得られ、一方、結晶粒度の小さいもの(1-10μm)は、高温域焼成(1100℃)によって初めて良好な値が得られることが明らかになった。又、同じ軟焼石灰でも、水和性試験の初期値が良好なものがそうでないものに比較し、塊状石灰への溶鉄中硫黄の浸透が著しいことを見出した。本年度は以上の結果の機構を明らかにすると共に、FeO含有製鋼スラグへの滓化について研究した。 1.生石灰の水和性及び溶鉄中硫黄との反応性を支配している因子上記の特性と最も関係があるのは、生石灰の比表面積の大小でなく、結晶粒界に主として存在する(粒内にも一部存在する)巾1μmオーダー以上の大きなき裂である。つまり、原石の結晶粒度の大きいものは、各結晶粒が焼成によって收縮し、粒界及び粒内に大きなき裂を生じやすい。一方、結晶粒度の小さいものは、高温域焼成によって初めて大きなき裂を生じる。そしてこのき裂の有無と塊状生石灰への溶鉄中硫黄の浸透及び生石灰粉による溶鉄脱硫試験結果とは良く対応した。すなわち、水和反応及び溶鉄との反応に関し、巾1μmオーダー以上のき裂は反応界面として重要な役割を有している。 2.塊状生石灰のFeO含有製鋼スラグへの滓化前述した水和性試験初期値の異なる軟焼石灰2種類と硬焼石灰をCaO39%,Si【O_2】41%,FeO20%,温度1500℃の溶滓中に回転浸漬し、Ca/Feの変化を原子吸光光度法により測定した。その結果、測定値にバラツキはあるものの、硬焼石灰の溶解速度が最も遅く、水和性初期値の良好な軟焼石灰が最も滓化が良い結果を得た。
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