研究概要 |
製鉄所コークス炉ガスを湿式脱硫する際に発生する大量の廃液に含まれるN【H_4】SCNは、各種金属を水溶性のアンミン錯体やチオシアン錯体として溶解する可能性がある。よってその基礎資料を得るため、試薬N【H_4】SCNの溶液を用いて各種物質の溶解條件と溶解度および溶解速度の関係をしらべ、また平衡論的検討結果および反応速度論的検討結果も考え合わせて溶解反応を推定した。溶解対象物としては、貴金属含有スクラップ,製鉄・製鋼ダスト,マンガン団塊等からの有価物の回収を考えて、Ag,ZnO,Mn【O_2】,CuO,NiO,Co酸化物をとりあげた。得られた主要な知見を下記に要約する。 1.AgはN【H_4】SCN濃厚液にかなり溶解する。pH2-3の溶液に【Fe^(3+)】を、pH8-10の溶液に【Cu^(2+)】を添加したものを用い、酸素を吹き込みながら溶解すると、Agはチオシアン錯体となってかなりの速度で溶解する。 2.ZnOの溶解は極めて速く、1時間で平衡溶解度に達する。溶解度はpH7付近で極小値、pH9付近で極大値を示す。酸性溶液では【Zn^(2+)】およびZnチオシアン錯体、アルカリ性溶液ではZnアンミン錯体となる。 3.Mn【O_2】は酸性溶液にのみ溶解し、pH4でかなり速く溶解する。Mn【O_2】の4価MnがSC【N^-】により2価に還元されて酸に溶解される。 4.CuOはN【H_4】SCN濃厚液にかなり溶解し、2時間で平衡溶解度に達する。溶解度はpH7付近で極小値、pH9付近で極大値をとる。酸性溶液ではチオシアン錯体;アルカリ性溶液ではアンミン錯体となる。 5.NiOの溶解は極めて遅く、酸性溶液ではチオシアン錯体,アルカリ性溶液ではアンミン錯体となる。 6.市販Co酸化物(【Co_3】【O_4】)は酸性溶液にのみ溶解し、チオシアン錯体となるが、溶解速度は極めて遅い。【Co_3】【O_4】を熱分解して得たCoOの溶解速度は【Co_3】【O_4】の100倍以上でかなり速い。
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