研究概要 |
本研究は、アルミニウムを熱水中に浸漬処理して水和酸化物皮膜を形成したのち、中性溶液中に移してアノード酸化することにより得られる複合アノード酸化皮膜の構造と生成機構に検討を加えたものである。本研究により得られた主要な実験結果は次のようである。 a)水和酸化物皮膜を形成したのち、中性ホウ酸塩溶液中、種々の温度(Ta=20〜95℃)でia=2mA/【cm^2】の定電流を与えてアノード酸化したところ、無定形酸化物層(内層,〓)と結晶性酸化物層(外層,〓)との二層からなる複合酸化物皮膜が得られた。酸化物層の全体の厚さ(〓+〓)はアノード酸化時間(ta)に比例して増大し、その速度Taに依存しない。水和酸化物皮膜層の厚さはtaに対して直線的に減少し、酸化物層へ組込まれてゆくが、その速度はTaに依存しない。内層/外層界面において無定形酸化物の結晶化がアノード酸化のさい生起するので、〓の増大速度はtaとともに減少するのに対し、〓のそれはtaとともに増大する。この無定形酸化物の結晶化はTaが高いほど促進される。 b)複合酸化物皮膜の外層は、数多くのボイドを含み、その体積割合はαvは0〜15%を占める。水和酸化物皮膜を形成したのち、種々の条件で水和酸化物の熟成を施してアノード酸化を行なうと、複合酸化物中のボイドの分布は大きな影響を受ける。例えば、室温,乾燥雰囲気中,tage=1700hrsの熟成を施した試料を300Vまでアノード酸化して得られた複合酸化物皮膜のαvは、tage=0の皮膜に比べた3倍大きい。また熟成温度Tageの増大とともに、αvは減少し、Tage>200℃では極めて小さな値を示す。しかし、Tage>300℃では、アノード酸化(Ta≧80℃)のさい、素地金属の局部的溶解が進行し、均一な複合酸化物皮膜が得られない。
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