研究概要 |
クリープ寿命を推定する手法は種々提案されてきたが, その中でもクリープ時間則を利用する新しい方法は大層興味深い. その理由は, 任意の温度および任意の応力におけるクリープ曲線の全様が原理的には予想可能であるからである. 本研究の主たる目的は, この新しい方法が一般に利用可能なのか否かを吟味することである. 昨年は573K(応力50MPa〜95MPa), 523K(応力90MPa〜200MPa)でクリープ試験を行なったが, 本年度は引き続き523K(70〜200MPa), 503K(140〜165MPa)の範囲でクリープ試験を行ない, logΘi(i=1n4)を決定すとともにlogΘiの温度依存性を決定した. これらの値に基づき, 10^<-9>〜10^<-5>/sの最少歪速度の応力依存性を予測した所, 実験と比較的良く合い, クリープ時間則を利用した寿命予測法の有効性を示唆する結果となったが, logΘiと応力との関係を内挿して得たΘi(1〜4)を用いて描いたクループ曲線は, 実験曲線と比較的良く一致する場合もあるが, 著しくはずれる場合もあった. これはΘi(i=1〜4)の間に何らかの関数関係が存在している可能性を示唆している. また, 現象論的には, Θi(i= 2or4)とクリープ時間(本研究では最長2×10^6秒)との積が指数関数の引数になっているからである. 現実の問題として, クリープ時間に見合う程度の制度でΘi(i=1〜4)を決定することはできないので, 標準誤差を余り変化させない範囲で, Θiをどの程度変更し得るか検討中である. クリープ時間則を利用した寿命推定及び内み挿によるクリープ曲線の推定は端緒に着いたばかりであるが, 今後の努力何如により, 大変有効なクリープ挙動推定法になる可能性を持っていることが明らかになった.
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