研究概要 |
本年度に挙った研究成果を、性能劣化機構に関するものと、実用合金開発に関するものとの二つに分けて述べると以下のようになる。 1.【C_u】-25.0 【Z_n】-8.5Al合金の単結晶単-バリアント試料について、形状記憶性能劣化に伴う長範囲規則度の低下を測定した。焼入れ後の予備時効処理を長くするほど長範囲規則度の低下はわずかで、逆の場合は速やかであり、一年間で最大15%の規則度低下を観測した。焼入室孔の活動による規則度低下が性能劣化のメカニズムであるとの推論を一層確かめることができた。さらにX線ワイセンベルグ法で三次元に逆格子空間を探索したところ、異常回折点として(3,1,6)、(3,1,12)等のグループのみが存在することが確かめられて、これら回折点の生ずる機構を追求中である。 2.自動車工業界との接触により、作動温度85℃、負荷ひずみ1%繰返数10万回に耐える銅基形状記憶合金を要望されたので、これを目標にして合金探索法Simpolexを用いて【C_u】-【Z_n】-Al-【N_i】-【M_n】-【S_n】系合金を試行した。現在のところ、3万回の負荷繰返しで作動温度の変動3℃以下、残存記憶性能70%の合金を三種開発することに成功した。この合金探索は今後さらに継続する予定である。上記3万回の繰返しというのは、試験時間が長期にわたるという制約から生じているものである。 上記二点はさらに発展改良が見込まれている。
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