本研究では、要求にあった溶接条件をできるだけ合理的に、かつ機械的に設定する手法を確立することを目的としている。容易に想像できるように、アーク溶接過程は多くの因子の影響を受ける複雑な系となる。このような系に対しては、数値計算モデルを主体とした計算機制御も有効ではないかと考えられる。このような観点から、本研究においては、溶接現象の数値計算モデルを試作・検討するとともに、これら計算モデルとシステム最適化の手法とを組み合せることにより、溶接条件のオンライン探索システムを試作した。本研究で得られた結果を要約すると次のようである。 1、計算モデルの試作に関して (1)薄板の裏波溶接および厚板の溶接現象に関する計算モデルを試作し、母板の溶融現象に及ぼす各種非線形効果について検討した。結果として、軟鋼・ステンレス鋼等・溶接では、熱放射損失に対する配慮が必要不可欠であることを指摘した。(2)溶融池表面に入熱を投入する計算モデルを試作し、隅肉溶接とか厚板の溶接では、母材表面に入熱を仮定する計算モデルでは定量性において限界のあることを示した。 2、オンライン探索システムに関して (1)放射温度計による計測データをもとに計算モデルをオンライン同定するアルゴリズムを試作し、ほぼ満足すべき結果の得られることを示した。(2)薄板の一層裏波溶接および厚板のビートオンプレート溶接を対象とした溶接条件のオンライン探索システムを試作・検討した。その結果、試作したシステムがほぼ満足できる精度で必要な溶接条件を探索できることを示した。
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