本研究は、近赤外半導体レーザーが、小型、安価、高出力で、かつ操作性にも優れている点に着目し、これを光源とする微量分析法を開発することを目的としている。本研究により得られた結果を以下に述べる。 1.近赤外半導体レーザー励起蛍光検出高速液体クロマトグラフィー:光ファイバーとフューズドシリカキャピラリーを用いるミクロフローセルを試作し、12fg(fg=【10^(-15)】g)の近赤外蛍光色素が検出できることを示した。一方高速液体クロマトグラフカラムで近赤外色素を分離し、蛍光検出する方法を検討したところ、0.3ngの検出限界が得られた。ついで近赤外蛍光色素の一種であるインドシアニングリーンを血清中に添加することによって蛍光標識し、タンパク質を分析した。本法によれば、1.3pmolのアルブミンが検出できることがわかった。一方微量の生体関連物質を特異的に分析するため、酵素反応を併用する方法について検討した。インドシアニングリーンは過酸化水素の存在下で蛍光強度が低下することが判明したので、この反応を用いる分析法について検討した。すなわち、キサンチン共存下でキサンチンオキシダーゼが過酸化水素を生成することを利用し、酵素活性を調べる方法について研究した。その結果、0〜1ユニットの間で検量線を作成することができた。 2.光ファイバーを用いるサーマルレンズ吸光法:近赤外域においては、高次振動に由来する吸収バンドが比較的強く観測される。そこで光ファイバー対からなる実用的なサーマルレンズ吸光分析装置を開発し、これを用いる分析法について検討した。励起光の導入にマルチモード光ファイバーを用いる方法は、入射効率に優れているものの、出射ビームのモードパターンが悪く、高感度分析に向かないことがわかった。一方シングルモードファイバーを用いる方法は、従来の吸光分析法と比べ数10倍高感度であることを明らかにした。
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