研究概要 |
希薄銀イオン溶液と比較的濃厚な臭化物イオン溶液との高速混合により生成した直後の臭化銀極超微粒子を触媒とする、希薄水溶液からの1,1'-ジエチル-2,2'-シアニン塩化物(Dye1と略称)の過渡J凝集の研究を、ストップトフロー・マルチチャンネル分光測光法により行った。臭化カリウムを含んだDye1溶液と、過塩素酸銀溶液とを、大塚電子(旧称ユニオン技研)製ストップトフロー付属装置RA-416型の高速混合器内で混合し、同社製マルチチャンネル分光検出装置MD-400型(広波長幅検出ヘッド付)を用いて混合液の時間分解吸収スペクトルを10〜100ms程度の時間間隔で測定記録した。 通常凝集が起こらないはずの低いDye1濃度でも、溶液混合後直ちにDye1のモノマー吸収の減衰が始まり、それに伴ってJ吸収の過渡的な増大が見られた。この変化の速度は低温ほど大きく、臭化銀の核生成速度と軌を一にしており、臭化銀核生成が接触J凝集の律速段階であることを示した。Dye1の濃度を変えて凝集速度を測定し、j凝集の反応次数を求めたところ、j吸収強度の増加速度を凝集速度とした場合は次数が2〜3となり、モノマー吸収強度の減少速度を凝集速度とした場合は次数が1よりやや大きい程度となった。これは液中モノマーの減少要因が接触j凝集だけではないことを意味する。Dye1と臭化銀の比率を変えた測定では、臭化銀の比率が大きい場合液中モノマーの減少がj凝集より先行し、またこの場合のj吸収帯は幅が広くかつ約10nm短波長側に現れることが判明した。これらのことから、接触J凝集はモノマーのままでの臭化銀表面への吸着と競争し、臭化銀の比率が増すにつれて後者が優勢になるものと考えられる。
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