本研究は、化学蒸着法によって触媒活性成分を担体に均一に分散担持させる新規な固体酸触媒の設計と、その有機プロセスへの適用を目的として行なったものであり、得られた成果は以下のように要約できる。 1. 化学蒸着法による固体酸触媒の設計 シリカ及びアルミナを担体とし、【B(OET)_3】、【Ti(OiPr)_4】などの金属アルコキシドを酸素共存下で190〜350℃で担体と接触させることにより、触媒活性成分である【B_2】【O_3】及びTi【O_2】が均一に分散担持された固体酸触媒【B_2】【O_3】/Si【O_2】【B_2】【O_3】/【Al_2】【O_3】、及びTi【O_2】/Si【O_2】が得られた。金属アルコキシドは担体表面の水酸基と反応して固定化され、ついで酸素酸化によって新たに水酸基を生成する過程を反復して活性成分が担持される機構を提案した。 2. 化学蒸着法固体酸触媒のキャラクタリゼーション 比表面積・細孔特性の測定、走査電子顕微鏡観察、X線回析、ピリジン昇温脱離、アンモニア微分吸着熱測定の結果から、触媒活性成分である【B_2】【O_3】及びTi【O_2】は担体上に非常に均一に分散しており、10〜50μm以上の大きい【B_2】【O_3】及びTi【O_2】が析出する含浸法触媒とは本質的に異なること、化学蒸着法触媒の固体酸強度は含浸法の場合よりもはるかに均質であることを明らかにした。3. 有機プロセスへの適用 化学蒸着法【B_2】【O_3】系触媒は、250〜300℃でのシクロヘキサノンオキシムの気相ベックマン転位反応において、含浸法触媒よりもはるかに高性能(オキシム転化率98〜100%ラクタム選択率95〜98モル%)であり、さらに化学蒸着法Ti【O_2】/Si【O_2】は気相エステル化の固体酸触媒として含浸法触媒よりも優れていることを明らかにした。 金属アルコキシドを用いる酸素共存下の化学蒸着は固体酸触媒の設計に極めて有用な新手法であると結論された。
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