研究概要 |
近接スピン間相互作用が期待できるように設計されたマトリックス構造をもつ高分子希土類金属錯体を合成、高分子構造と磁気的性質の相関を明らかにするとともに、高分子磁性体の基礎的知見を得ることを目的とした。 1。メタクリル酸-アクリルアミド共重合体、ポリエチレンオキシドグラフト-ポリメタクリル酸とEu,Tb,Smなど希土類イオンの錯形成挙動をビエラム法で解析した。錯生成定数はエントロピー項の寄与により【10^(12)】と著しく大きく、カルボキシレート3配位構造を安定に形成した。配位座間の距離、連鎖の可撓性および水和状態が、嵩高い希土類イオンとの錯形成の支配因子であった。 2。一定のアクリレート系共重合体を用いると、希土類イオンを含有した柔軟な膜が得られた。可視吸収、螢光スペクトルより、含量30%以上では濃度消光、エネルギー移動が観測されたが、それ以下では錯体は均一構造を保って高分子マトリックス中に分子分散していた。 3。Gd錯体は室温でも大きな磁気モーメントを与え、そのメタクリル酸-アクリレート共重合体錯体は常磁性を示した。 4。錯体部位の配列構造をさらに規制するため、配位マトリックスに共役構造を取り入れたポリピリジレン×チリデンニトリロ、ポリ-α-ピロレニンを合成、それらのEu,Gd,Fe錯体を合成した。IRスペクトルから硫酸イオンなど陰イオンを架橋配位子とした複核構造が、Fe(57)×スバウアスペクトルより価類の異なるイオンの混在が示された。 5。Gd錯体は常磁性であったが、一定組成のFe錯体は両共役配位子とも強磁性を示した。しかしXスバウア内部磁場などから、錯形成に際し微量副生した酸化鉄が一定の高分子マトリックス共存下で極微小粒子として安定に保持されている可能性も示唆された。
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