研究概要 |
1.テトラヒドロフラン(THF)のトリフルオロメタンスルホン酸無水物によるリビングカチオン重合を行い、ジピリジン誘導体と反応させてビオローゲン構造を主鎖に含むアイオネン型ポリマーを合成した。ピリジン環が直接結合しているもの(PTV),ピリジン環の間がジメチレンのもの(PTS),およびビニレン基のもの(PTU)の三種が合成可能であった。 2.PTV,PTS,PTUはアルコール溶液のキャストにより柔軟なフィルムに成形される。各フィルムを真空脱気下可視光照射を行った。PTVおよびPTUは無色あるいは淡黄色から、それぞれ緑色および赤褐色に変化し、空気に接触することにより元に戻った。すなわち、ビオローゲン単位の存在に基づくフォトクロミズムを示すことが判明した。一方、2つのピリジン環が共役していないPTSではフォトクロミズムは観測されなかった。 3.今年度、新たに発見された現象はPTVとPTUのサーモクロミズムである。すなわち、両ポリマーフィルムを空気中加熱して昇温させることにより、190℃付近で光照射の場合と同様な色変化が観察された。 4.前年度に合成された水酸基末端プレポリマーを用いてセグメント化ウレタンウレアの合成を行った。in vitroの血液適合性試験に加えて犬静脈への短期埋入法によるin vivo試験を行い、エチレンオキシド(EO)単位導入の効果を確認した。 5.SPUUが優れた引張物性を示し、動的弾性率の温度分散からミクロ相分離構造を有すること、そして相分離状態が血液適合性と相関していること,応力緩和挙動および長期加水分解安定性についてもEO単位導入の効果が存在することなどが判明した。 6.次年度は、ビオローゲン系ポリマーのクロミズムを更に追究し、全体のまとめを行う予定である。
|