1.光誘起電子移動反応において、電子の流れる方向の規制は、無機半導体界面の整流性接合を用いることによって既に成功している。当該代表研究者らは、ポリエチレンイミン骨格に、メロシアニン系色素を共有結合した高分子を基板上に順次スピンコートする方法によって、二層膜を形成させ、高分子異相の接合界面に基づく整流性光レドックス電流を初めて観測することに成功した。 2.酸化還元電位の異なった一連のキノン類を包含したメロシアニン色素高分子膜における光誘起電子移動速度を光電流を観測することにより比較したところ、マーカスラの理論の"invertea region"が実現している可能性を認めた。 3.N-メチルフェノチアジンをレドックス化学種に用い、高分子膜中における自己電子交換速度をポテンシャルステップ法により詳しく調べた結果、膜マトリックスとしての性質が、電子移動過程に大きな影響を持っている事実を認めた。 以上のような研究結果を得たことにより、本研究の目標は一応達成されたが、これらの成果は、研究課題の解決を提供するものではなく、今後の、より系統的な研究の方向を示唆する糸口を提供するものである。
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