研究概要 |
ベンゾキノンおよびその誘導体を用いるとポリマーフィルムの光橋かけ反応が容易に進行することがわかったので、これらのキノンによるポリマーフィルムの橋かけ反応機構についての知見を得ることおよび、【Ar^+】レーザー(488nm)光に感光するポリマー系の開発という観点から、可視光(入>370nm)に感光するキノン-ポリマー系の開発についても検討した。ポリメタクリル酸メチル(PMMA)のベンゾキノンによる光橋かけ反応はラジカル反応で進行し、ベンゾキノンにアルキル基を導入すると、その活性は著しく低下した。一方、ポリマー側鎖にエポキシ基をもつポリグリシジルメタクリラート(PGMA)やエピチオ基をもつ共重合体(P(ETMA-CO-MMA))では、PMMAの場合と異なり、アルキル置換基(例えば、エチル、t-ブチル基など)をもつベンゾキノンでも光橋かけ反応が容易に進行することがわかった。この光橋かけ反応は側鎖のエポキシ基あるいはエピチオ基の開環重合によっておこると推定された。さらに、アルキル基をアルキルチオ基に変えるとベンゾキノン誘導体の吸収は〜500nmまで移動し、エピチオ基をもつポリマーに添加すると、370nmより長波長の可視光でも橋かけできた。ポリマー側鎖にキノノイド基を有するポリマーは橋かけ効率が非常に高いことがわかったので、側鎖にキノノイド基をもつポリマーの合成を試みた。側鎖にベンゾキノニルチオアセトオキシ基をもつメタクリル酸メチル共重合体は官能基の導入率が数%と低いにもかかわらず、非常に速く橋かけするポリマー系であることがわかった。また、3-(P-ベンゾキノニルチオ)-1,2-プロパンジオールと種々のジイソシアナートから合成したポリマーでは、高密度の官能基を導入することができたが、橋かけ速度は予想外に低かった。さらに別のアルカンジオール成分を追加すること、脂肪族系ジイソシアナートを用いることなどにより橋かけ速度も著しく増大した。
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