研究概要 |
1.前年度、各種果実のIAAの消長を調べたところ、モモ'大久保'及びキウイフルーツなどに限って、貯蔵中にIAA濃度が上昇するという異常な結果が得られた。分析法に問題があると考え検討したところ、これらの試料に限り、HPLCでは、IAAと分離されない成分が存在することが判った。この成分としては、主に2つの化合物が存在し、そのうち1成分は、GC-MS分析の結果、P-ハイドロキシフェニルプロピオン酸と同定した。これら試料について、HPLC法とキャピラリーGC法を比較検討した結果、後者がより信頼性が高い結果を示したので、以後これら試料については、この方法を採用した。 2.前年度の研究において、キウイフルーツ'ブルノー'の場合、その老化又は追熟に判うエチレン及びABAの消長のパターンは他果実の場合と比較し非常に異ったパターンを示した。今年度はこの差異を明らかにするため、キウイフルーツ'ブルノー'及びモモ'大久保'の20℃貯蔵中におけるエチレン発生,その前駆体であるACC,老化ホルモンABA及び生長ホルモンIAAの消長を調べ、それら果実の老化、追熟に伴うそれらホルモンの相互の関係を検討した。その結果、モモでは、貯蔵中に、ABA濃度及びエチレン発生の上昇し、IAA及びACC濃度が減少した。一方、キウイフルーツ'ブルノー'では、ABA及びIAA濃度の減少し、エチレン発生及びACC濃度の上昇が認められた。今関らは、ヤエナリの胚軸を用いた研究で、IAAはACC合成酵素活性を促進し、ABAはACC合成酵素活性を阻害することを明らかにしているが、本研究で得られた結果は、今関らの結果を支持できるものであり、果実のACC生成は内生するABA/IAA濃度比と密接な関係があるものと考えられる。
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