研究概要 |
ストレスによる発癌促進機構を解析し、それを防ぐための栄養学的手段を開発するための研究の一環として以下の研究を行った。I)発癌プロセスによる内因性ヒスタミンの意義について ヒスチジン脱炭酸酵素(HDC)の誘導機構の解析;ヒスタミンはポリアミンと同様細胞の分化、増殖促進作用を持つことが知られ、発癌の原因物質の一つとみなされている。従来ヒスタミンの生成は肥満細胞や好塩基球などの脱か粒によると考えられてきた。一方これとは別にHDCの誘導により生成されるルートもあることがわかっていたがそれがいかなる細胞において起るかは全く不明であった。本研究でわれわれは初めて免疫細胞の培養系を用いてこれらの解析を行い、次の結果を得た。すなわちまずマウス脾臓細胞培養系においてConAやLPSなどのミトーゲンやTPA(発癌プロモーター)の添加により本酵素の誘導が起ること、HDCは細胞外へ分泌され、そこでヒスタミンが生成されることを明らかにした。ついでHDC誘導細胞の同定を行ったところ、それがマクロファージであり、Tリンパ球由来の液性因子がこの反応を促進することを突き止めた。またこのことはマクロファージ様癌細胞P388D1についても確めた(報文1-7)。 II)ビタミンCによるヒスタミン解毒作用について ビタミンCに抗癌作用があることがL.Paulingらによって言われており、またヒスタミン解毒作用も持つことも知られている。我々は免疫反応に対する両者の相互作用性をマウスリンパ球のミトーゲン反応を例として検討した。その結果ミトーゲン反応時HDCの誘導が起こり、生成したヒスタミンが当反応を抑えることを明らかにした。そこでビタミンCの添加効果をみたところヒスタミンの分解が起こり、ミトーゲン反応のderepressionが起ることが明らかになった。(報文8,9)。
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