研究概要 |
プルラナーゼは、デンプンの側鎖分解酵素で工業的に利用されている。本研究では、筆者らによってクローン化されたプルラナーゼ生産遺伝子の構造と酵素の誘導調節機構の解明を行なった。また細胞外分泌機構を明らかにし、本酵素の細胞外生産系を開発することも目的とした。 1.調節部位および構造遺伝子領域の決定:クローン化された遺伝子を欠失、サブクローニング、lac融合によりプルラナーゼ生産に関与する調節遺伝子部位および構造遺伝子部位を決定した。 2.プルラナーゼ遺伝子の全塩基配列の決定:上記調節遺伝子と構造遺伝子領域の全塩基配列の約4.2-kbを決定した。その結果前駆体プルラナーゼは、10-96個のアミノ酸残基からなる分子量119,334のタンパク質で、19個のリーダーペプチドを持ち、成熟酵素は分子量117,258の単量体タンパク質と推定した。 3.pulA遺伝子発現調節機構:pulA-lacZ融合により、pulA発現はマルトースにより誘導され、malT遺伝子が関与していることを明らかにした。ATGコドンの8bp上流にはSD配列があり、-10と-35のプロモーター配列が確認された。 4.プルラナーゼの分泌と細胞内局在性:大腸菌ではペリプラズムや細胞外膜にまで分泌されなかった。親株では細胞外に70%以上が分泌するが、クローン株では細胞外に約20%、細胞内、内膜、外膜に40%と20%づつ局在していた。 5.プルラナーゼのリポプロティンとしての分泌特性:前駆体プルラナーゼのN-末端側に細菌のリポプロティンのリーダーペプチド中に認められる共通配列leu-Leu-Ser-Gly-Cysが発見された。グリセリンやパルチミン酸の取り込み実験より、プルラナーゼはリポプロティンであることが分った。システィン残基がパルミチン酸により修飾され、成熟タンパク質として分泌されているものと思われた。
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