ブラシノライドおよびカスタステロンの標識体を得るために、合成ドリコライド及びドリコステロンのエキソメチレンをトリチウムによって還元した。放射性還元物は薄層および高速液体クロマトグラフィーにより精製し、約4Ci/mMの放射性ブラシノライドおよびカスタステロンを得た。 3葉期のイネ(コシヒカリ)の根部を(3H)カスタステロンの溶液に6時間浸漬し、吸収させたものと、これをさらに10日間カスタステロンを含まない培養液中で培養したものについて分析を行った。その結果カスタステロンは根部より吸収され、茎葉部へ移動することが明らかとなった。また6時間処理によってカスタステロンは急速に水溶性の代謝物へ変換することが明らかとなった。この代謝物の構造は決定されていないが、配糖体というよりはむしろ結合型の酸性物質であることが判明した。10日後ではカスタステロンの大部分は極性の代謝物に変化しており、未変化のcastasteroneは0.43%しか残っていなかった。一方カスタステロンのブラシノライドへの変換が起らなかったことより、従来考えられていたカスタステロンのブラシノライド前駆体説は証明し得なかった。 (【^3H】)ブラシノライドについても同様の実験を試みたところ、カスタステロンと同様の傾向が見られた。
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