研究概要 |
Klebsielaプルラーナーゼを用いてマルトオリゴ糖とサイクロデキストリン(CD)を縮合させ、分岐CDを合成する条件を詳細に検討し、反応混液から分岐CDを分離、精製する方法を確立し、分岐CDの構造と諸性質を研究した。 プルラナーゼの基質としては、α-,β-,γ-CDのうちα-CDが最も適した基質であり、ついでγ-CD,β-CDの順であった。イソアミラーゼの場合は、CD環の大きいもの程よい基質であることと、明らかに異なる基質特異性を示した。マルトース(【G_2】)とマルトトリオース(【G_3】)では、α-CDを側鎖の受容体にする場合、【G_3】の方がよい基質であったが、β-とγ-CDに対しては【G_2】と【G_3】で差異はなかった。これもイソアミラーゼと異なる特異性である。 【G_2】とγ-CDを基質として、プルラナーゼの縮合反応の条件を検討し、温度50℃,pH6.0が至適であることを見出した。基質濃度はγ-CDが0.4Mの時、【G_2】の濃度が1.8Mで【G_2】-γ-CDの生成が最高になり、更に【G_2】の濃度を増すと、【G_2】-γ-CDの生成率は急激に低下した。縮合反応は加水分解の逆反応であり、水が可及的に少ない程有利であると考えられたが、結果は予想に反した。これは通常の化学反応と異なる現象である。少量の水は酵素を活性のコンホメーションに維持するのに必要であるのか、基質や生成物の拡散が律速しているのか、或は、両者が相乗的に作用していることも考えられる。【G_2】とγ-CDの縮合反応では、【G_2】-γ-CDの他に【G_2】が2分子γ-CDに縮合したdi【G_2】-γ-CDや分岐マルトテトラオースも生成した。これらの構造は【^(13)C】-NMR,メチル化分析、酵素分解などの手段によって決定した。γ-CDに側鎖をつけることによって、γ-CDの水に対する溶解度(25℃)を約6倍高めることができ、人赤血球に対する溶血活性を約50%軽減することができた。これらの事実は今後のCDの利用に対して、分岐化する方向を示唆するものである。
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