研究概要 |
東北地方のサケの遡上生態,魚体の大きさ,繁殖形質などについて検討した。遡上期は河川ごとにほゞ定まっているが、卵の移殖にともなって変化も生じた。すなわち、遡上期のおそい津軽石川から卵を移殖した96河川のうち、46河川で津軽石川での採卵日に一致したおそいピークができた。また、26河川ではおそいほうに遡上期がのびた。さらに、移殖元の津軽石川でも大量の後期卵を移出した1978〜1981年級では遡上期が早くなった。 性比について見ると、従前の説のとおり、遡上初期に雄が多く、終期に雌が多かった。また、遡上期の早い河川では雄が多く、おそい河川では雌が多いという新しい知見を得た。 魚体の大きさは、これまで、遡上期のおそい河川で相対的に大きかったが、近年、遡上期のおそい河川で魚体が小型化したため、この傾向は明瞭でなくなった。繁殖形質には、同一河川内でも年変動が見られたが、河川間にも明らかな差があった。体重4.0kgでの修正値でいうと、総卵重では河川間に明瞭な傾向は見られなかったが、滝渕川で0.79kgと最も重かった。また、卵径の小さい(7.18mm)泉田川で抱卵数が3530粒と多く、卵径の大きい(7.46mm)大槌川で抱卵数が3150粒と少なかった。滝渕川では卵径は中程度(7.22mm)であったが、総卵重が重いため抱卵数は3590粒と多かった。 容量法によらないで、これまでに得た平均一卵重と卵径の関係から、一卵重から卵径を推定する方法を示した。
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