海洋生活期のアユを、湖産由来稚仔と河川産由来稚仔に区別した上で、その群構造について検討することを目的に本研究を行った。そのため、形態等でこれからが区別できるか、また湖産由来稚仔が海で生き残れるかについても調べた。 第1に、湖産および長良川産アユ稚仔をほぼ同一条件下で飼育したものの外部形態、骨格形成について比較した。外部形態では15形質のうち9形質で違いが認められた。この違いをもとに、海で採集した稚仔について検討したところ、河川産とは違いが認められなかったが、湖産とは3形質で違いが認められた。この結果から、この海産のサンプルは、少なくとも河川産由来のものが主である可能性の大きいことが指摘された。体部骨格系の発達過程の比較では、骨形成開始時期にはっきりとした違いが認められた。いずれの骨も、湖産のほうが早く開始され、また形成が始まっている最小個体と始まっていない最大個体の体長差が大きかった。この結果と海で採集したサンプルの結果と比較したところ、海産の骨形成開始は湖産よりさらに早かった。 次に、海で採集したサンプルの耳石を用い、日令査定を行ない、ふ化日の推定を行なった。この結果、10月中旬以降の主ふ化群に先立ち、9月中旬から同下旬にかけての、湖産由来アユのふ化時期に相当するものが、わずかではあるが発見された。その結果、湖産由来アユ稚仔は海で生活できる可能性があることが示された。しかし、少なくともこの採集地においては、湖産由来稚仔の割合が大変小さいと推定された。 現在、日令組成等に基づく群構造について検討中であるが、以上の結果をふまえ、両系統を圧別して扱うための研究もさらに進める必要があると思われる。
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