研究概要 |
フグ科魚類の中には天然交雑種と思われる個体がしばしば出現する。これ迄の研究から次の5つが天然交雑種と考えられている。マフグ×トラフグあるいはカラス,シマフグ×ナシフグ,シマフグ×コモンフグ,シマフグ×トラフグあるいはカラス,シロサバフグ×クロサバフグである。この中で最初のものゝの中には交雑種の後世代と考えられるフグも含まれている。これら天然交雑フグの起源解明のために、トラフグ属6種について、天然および凍結精子を用いて計20回の人為交雑実験を行った。供試フグは次の通りである。トラフグ,シマフグ,クサフグ,ヒガンフグ,コモンフグの雌雄およびカラス,マフグ,ナシフグの雄である。これら8種類の交雑フグの中でふ化仔魚を若魚ないしは成魚まで飼育できた7種類の体色,斑紋についてみると、トラフグ♀×カラス♂,トラフグ♀×シマフグ♂,ヒガンフグ♀×トラフグ♂,クサフグ♀×トラフグ♂はいずれも母親に似ている。一方、トラフグ♀Xマフグ♂,トラフグ♀×クサフグ♂は共に父親に似ている。さらに、トラフグ♀×コモンフグ♂では、母親に似るものと父親に似るものとの両方がみられた。これらの人為交雑フグの形質の検討結果からは、上記の天然交雑種とと思われるフグの両親を明確にできる資料は得られなかった。 人為交雑フグの中には、体色,斑紋がトラフグに似たものが3種類あったがそれらの成長はいずれもトラフグより劣っていた。また、トラフグ養殖の障害となっている尾鰭の咬み合い行動がみられないものもあった。しかし、いずれも、外観,成長などの点でトラフグより優れた養殖適種と思われるフグは見出されなかった。
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