研究概要 |
瀬戸内海東部で大規模赤潮を形成するChattonella属をはじめとする鞭毛藻では海水中のリンと鉄が増殖に重要な役割を果すことが示めされている。しかし、水中の溶存態鉄は5〜10μg/lで、Chattonellaが最大増殖を示す200μg/lにくらべて極めて低く、プランクトン自身に海水中の懸濁態鉄等を可溶化し吸収する機構の存在を検討する必要がある。そこで本研究では培養又は赤潮から集めた試料中におけるキレート物質の存在を明らかにし、また鉄の捕集機構を検討することにした。 1983年7月の赤潮の際に採集したC、marinaおよび培養したC、antiquaから80%アルコール可溶性成分を抽出し、XAD-2,鉄-Chelex100,Dowe×50W、Sephade×G-15によるカラムクロマトグラフィーおよび薄層クロマトグラフィーにより、キレート作用物質を分離した。C.marinaから分離されたhydroxamateを有する物質のNMRはデフェロキサミンBのNMRとよく一致し、赤潮鞭毛藻がサイデロフォアを生産していることが確認された。1986年夏の赤潮構成種3種にもサイデロフォアが見出された。これらのサイデロフォアの化学構造はまだ明らかではない。Chattonellaの膜の外側にグリコカリックスの存在が認められたので、C、antiquaから多糖の分離を行った。希アルカリ可溶性多糖を抽出し、これをさらにDEAE-セルロースイオンクロマトグラフィーで分離し、4つの成分を加えた。これらのうち、硫酸多糖と考えられる成分は、鉄1原子に対して単糖(6炭糖として)17分子の割合で鉄を含んでおり、他の糖成分にくらべて鉄が多い。重金属類の分析結果と併せて検討した結果、グリコカリックス中の硫酸多糖が、まず鉄を捕集し、これがサイデロフォアに移されて細胞内に吸収される機構が考えられた。
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