研究概要 |
広範かつ効率的な抽出法を適用して、Cochlodinium'78八代海型種赤潮から魚毒性を有する低分子および高分子画分を分離した。 低分子画分からは、さらに、ゲル瀘過,陽イオンおよび陰イオン交換クロマトグラフィーなどの処理を通して、新しい2種の麻ひ性毒を精製した。これらの毒は、各種機器によるスペクトル分析(IR,【^1H】-NMR,FAB-MASS,蛍光X線など)結果から、Carbamoyl-N-Sulfo-11α-hydroxyneosaxitoxin Sulfateまたはその11βepimerに亜鉛の結合した特異な構造を有することが判明した。両化合物は、中性および弱アルカリ性で安定であるが、酸が存在すると、一部毒性の高い11α-hydroxyneosaxitoxin Sulfate(Gonyautoxin-1)とそのepimer(Gonyautoxin-4)に転換した。11αまたは11β型化合物のマウスに対する比毒性は20-30または50-80MU/mgであった。マダイ稚魚をへい死にいたらしめる最小致死濃度は前者で10-15mg%,後者で1-5mg%であった。両化合物は低毒性のため生物検定法では定量が困難であったが、高速液体クロマトグラフに示差屈折率検出器を併用することによって検出・定量を容易にした。 一方、高分子画分からも、有機溶媒による分画,フェノール抽出,水透析などの処理を経て3種の有毒画分(神経毒,溶血素,凝集素)を分離し、それぞれの画分について生物試験を実施した。これら3画分に曝されたマダイ稚魚の鰓では2次鰓弁で異状(例えぱ浮腫)が認められたが、その毒性効果は神経毒画分で最も顕著であった。溶血および凝集画分のヒツジ血球に対する力価は600および6200であった。目下、HPLCなどによって、ここで得られた3画分の精製を試みている。
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