1.河川構造令が昭和51年に施行された以降に建設された取水堰において、洪水後に可動堰ゲートの敷上への堆砂によって、不都合を生じている場合が多い。昨年度までの太田頭首工(渡良瀬川)および、岡島頭首工(岐阜県揖斐川)、邑楽頭首工(渡良瀬川)などの事例の解析や、それらを模した水路実験によって、堆砂の原因は、現況河床高より低く定められている計画河床高に取水堰の敷高を合わせて建設したことにあることが明らかになった。 2.同時に、この種の堆砂を防ぐ対策として、堰の上下流の河道区間において、計画河床高に見合う河床高に河床を掘削することが考えられる。計画洪水流量に匹敵するような洪水がでた場合にも、堰の敷上に堆砂が生じないために必要な河床掘削の範囲と量について、上記の頭首工を例として、分析が加えられていた。 3.本年度は、これらの結果が現地の頭首工において適用できる可能性を、現地の視察と聞き取り調査によって、確認した。また、学会発表と行い、他の研究者の意見を聞き、討論することを通して、より普遍的な対策についても検討した。 4.本年8月に災害を受けた福島県の諸頭首工を調査し、敷高の高い堰は、治水上からは、やはり大きな不都合を生じることが再確認された。堰の敷高を切り下げる方法は、河川の安全を高めるという観点からは、妥当性をもっていることが明らかな以上、それを前提に堆砂を防ぐ対策を考えざるを得ない。堰の上下流の十分に広い範囲における河床掘削によって対処するしか方法はない。 5.なお、河川改修工事の進展によって、実際の河床高が、平均的には計画河床高まで低くなっても、砂礫堆の形成に伴う河床の凹凸形状がある限り、堰の敷上への堆砂の可能性は残る。
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