研究概要 |
笠岡湾干拓地内圃場及び実験室内において、当干拓地土壌の石膏投入による土層改良に関して調査、実験を行い、以下の結果を得た。 1.石膏を投入した現地圃場での調査の結果、石膏からのカルシウムイオンが土粒子の吸着ナトリウムイオンと交換反応(吸着イオン比の変化)を生じて、拡散二重層厚が減少し自由水が増加した。そのため、石膏混入層においては水中沈定容積試験からわかるように分散反応がおさえられて土は凝集状態となり、保水性の向上、コンシステンシー指数の低下,透水性の増大,気相率の増加等の物理性の変化がもたらされた。 2.吸着イオン構成比がナトリウムイオンにかたむいている場合は、明らかに土壌の物理性が悪い。その改良が石膏の施用によってどのように進展するか、それと共に除塩がいかに進むかについての判定基準としては、水中沈定容積試験が最も適切であることを示した。 3.陽イオン交換反応の理論式に基づき、場所的変動を考慮して計算された石膏量を昭和59年末に散布・混入した施工区において、時間的経過に伴う吸着ナトリウムイオンのカルシウムイオンによる交換の進行状況を昭和60,61年度にわたり追跡調査した。その結果、現在のところは概ね順調に交換が進行し、かつ50cm深までの耕起の効果もあって土層改良の進展が著しい。すなわち、混入後の時間が経過するに従い次第に吸着ナトリウムイオン比が低下し、その結果土壌の物理性が改良されると共に、塩分濃度も長期的に減少する方向にあることが明らかとなった。また、ほとんど除塩が停滞している地点でも、周辺環境の相対的変化が進むに従い、ゆるやかな速度ではあるが塩分濃度の低下は着実に進行するであろうことが確信できた。
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