研究概要 |
熱帯地域においては、生後7〜8年経過しても体重が300kgに満たない牛も珍しくはない。これは遺伝的能力にも起因していると思われるが、熱帯環境も重要な要因であろう。以前の研究において、暑熱環境下で飼育したラットの大腿骨は細く、軽くなり、甲状腺ホルモン(【T_3】【T_4】)分泌は低下するという知見を得ているが、暑熱環境と骨成長の関係を明らかにするには不明な点が多い。 本研究は飼料給与水準を同一にしたラットにおいて暑熱環境が骨成長に及ぼす影響をテトラサイクリン注入法と脱灰骨基質埋没法を用いて生化学的に検討した。方法:試験1では快適環境(24℃)と暑熱環境(34℃)下で【T_3】投与と無投与の2処理を行い、テトラサイクリンを試験開始後7日目と10日目に腹腔内に注入した。試験2では快適環境と暑熱環境の2区でラットを飼育し、脱灰処理をした骨基質を10μgずつ外腹斜筋中に3ケ所移植し、7,14,21日目に移植物を取り出して組織学的、生化学的に検討した。結果と考察:暑熱環境において、大腿骨の太さの成長が阻害されるという以前の報告を裏付けるように骨膜側の骨沈着は暑熱環境区で明らかに阻害された。骨成長の指標を考えられるAlp-ase活性は骨沈着が阻害されているにもかかわらず、暑熱環境により上昇した。この結果は暑熱環境が骨幹部への骨基質の動員を阻止していることを示唆している。また【T_3】投与によりAlp-ase値が正常値に近づくとともに骨膜側の骨沈着は快適環境のものに近づいた。これらのことから暑熱環境による甲状腺機能の低下は骨の太さの成長阻害の一因であると推察された。筋中に埋没された脱灰骨基質のAlp-ase,Acp-ase活性はどちらも暑熱環境下で低下する傾向にあり、軟骨の誘導に続く、石灰化並びに骨吸収が高温環境で抑制されることが示唆された。また脱灰骨基質の埋没による骨髄形成も暑熱環境下で飼育されたラットでは明らかに末発達であり、骨のリモデリングの阻害が考えられた。
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