研究概要 |
本研究は、昨年度に引き続いて、尿へ排泄される3-メチルヒスチジン(3MH)の量から筋肉蛋白質の分解、合成量を測定する方法(3MH法)によって、反芻家畜における筋肉蛋白質の代謝に及ぼす、飼料蛋白質の違いおよびホルモン様の作用を表すサリノマイシンの影響を調べた。 得られた結果は、次のとうりである。 1.標準的な飼料に、30ppmのサリノマイシンを添加すると、血漿のアミノ酸の中でセリン,ロイシン,チロシン,ヒスチジンの濃度が上昇した。一方、グルタミン酸,グリシン,アラニン,イソロイシンの濃度は低下した。これに対して、血漿中の3MH濃度は、0.52μmolesから0.74μmolesへと著しく上昇した。この結果は、血漿の3MHの濃度の変化から、筋肉蛋白質の分解量の変動を推察できる可能性を示した。 2.蛋白質飼料として、ルーメンでの分解性が劣るコーングルテンミールを与えると、筋肉蛋白質の分解速度は1.80%ldであった。分解性の優れている大豆粕に切り換えると分解速度は1.12%に低下した。サリノマイシンを添加すると再び1.58%に分解は高まった。合成速度もほぼ同様の対応を表した。 3.これらの結果は、ルーメンでの分解性の優れている蛋白質を反芻家畜に与えた時には、そのアミノ酸は動物に効率よく利用される事を示しているのに対して、一方、ルーメンでの分解性の悪い蛋白質を与えると動物の必要としているアミノ酸が十分供給されないがために、動物のからだの蛋白質を分解、動員して補っている事が明らかになった。これらの現象は、1.で示したように、ある程度は、より簡便な手法である血漿の3MHの濃度の変動からも推測できることもわかった。
|