鶏伝染性気管支炎(以下、IBと略記)は、IBウイルス(以下、IBVと略記)による呼吸器病と認識されてきたが、現在では鶏の腎炎もIBVにより引き起こされることが判明している。私達はすでに実験室での継代が進んでいない北-1/徳島株を、ヒナの呼吸器内で継代したところ、ウイルスの抗原性は容易に変異することを認めた。今回はIBVの継代方法を変えれば、臓器親和性も変化するのではないかと考え、腎炎由来の野外株(鹿児島-34株)及び呼吸器病由来の野外株(鳥取-2株)を用いて検討した。 継代方法は、ヒナの気管にウイルス感染呼吸器乳剤を接種する継代(以下、気管継代と略記)またはヒナの静脈にウイルス感染腎乳剤を接種する継代(以下、腎臓継代)である。 10代目ウイルスの体内分布を親ウイルスのそれと比較し、臓器親和性の変化を調べた。鹿児島-34株の親ウイルスは、腎臓で14日間、呼吸器で5日間検出されたが、気管継代10代目ウイルスは、腎臓からは3日目まで、呼吸器から10日目まで回収された。鳥取-2株は、気管継代10代目ウイルスの方が親ウイルスよりも、両臓器から長時日ウイルスが回収された。 継代の進行に伴い、ヒナに対し病原性の強まる傾向は両株共認められなかった。気管継代によりウイルスの抗原性は変異した。ウイルスの物理化学的性状は継代により変化しなかった。なお、両株の腎臓継代は5代目でウイルスが消失し、継代不能となった。 以上より、腎炎を主徴とするIBVが、呼吸器病を主徴とするIBVに変化し得ることが明らかになった。
|