研究概要 |
Ehrlich腹水腫瘍細胞(以下EAC)に対するMycoplasm-a gallisepticumの生菌、加熱死菌、および生菌を超音波処理して得た菌体細胞膜分画ならびに可溶細胞質分画の抗腫瘍作用を、in vitro-in vivo法と固型腫瘍内注射法を用いて検討した。またこれらの各成分の血球凝集能の比較を行った。得られた成績は次のとおりである。 1.マイコプラズマの生菌付着EACのマウス体内での増殖性は、腹腔内、背部皮下および大腿筋肉内接種では腫瘍の発現が阻止され、陰のう内では有意の抑制効果がみられぬなど、接種部位による差がみられた。 2.マウスの腹腔内接種および皮下接種法を用いたin vitro-in vi-vo試験では、生菌菌体および菌体細胞膜分画に抗腫瘍作用が認められ、これらはそれぞれ128倍および16倍の血球凝集価を示した。一方、加熱死菌菌体,細胞質分画,培養上清などには、ほとんどまたは全く抗腫瘍作用がみられず、これらの血球凝集力価はいずれも4倍以下であった。 3.上記の各成分を、あらかじめEACの皮下接種により形成されたマウスの固型腫瘍内に直接投与した場合は、加熱死菌も生菌菌体や細胞膜分画と同様、50ないし60%の割合で腫瘍の退縮・延命効果を示した。 4.マイコプラズマ付着EACは、in vitroでは急速に死滅することはないにもかかわらず、マウスの体内では速やかに消失することが判った。以上の成績から、invitro-in vivo試験で認められるマイコプラズマの抗腫瘍作用は、生体細胞膜寄生性微生物である本菌によるEACの異物化に伴なう食作用発現によるものと考えられる。ただし、マイコプラズマ付着によるマウス体細胞のwake-up効果も否定できない。一方、固型腫瘍内直接投与による腫瘍退縮効果は、上とは別の機序によるものと考えられ、今後の解明が必要である。
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