研究概要 |
ボツリヌス菌神経毒素(A〜G型)は神経終末部、特にシナプス前膜に作用し、アセチルコリンの放出を阻害する。毒素は2つのフラグメント〔重鎖(H)、分子量100K,軽鎖(L)、分子量50K〕で構成され、活性発現にはこれらが相補的に機能すると考えられている。本研究では、モノクローナル抗体を用いて、毒素の抗原微細構造 機能について検討した。その結果、毒素分子は少なくとも3つのドメイン(L,H-1,H-2)から構成されていることを明らかにした。脳シナプトゾーム膜への結合部位は、毒素分子のC末端に位置するH-2部分にあることがわかった。毒素と結合するレセプターの一種と考えられているガングリオシドの種類は、毒素の型により異なることがわかった。E型神経毒素が結合するGQ1bにはB型神経毒素はほとんど結合しなかった。H-2部分を欠く、L・H-1フラグメントはガングリオシドには結合しないが、その構成成分であるセレブロシド、遊離脂肪酸に結合した。この結果は、H-2部分がガングリオシドの親水性部分である糖鎖に結合し、L・H-1フラグメント、特にH-1が疎水性部分に結合すると考えられた。H-2部分が神経膜表層のレセプターに結合し、H-1部分は膜内侵入過程に重要な役割をすると考えられた。マウス抗毒素抗体と金コロイド標識抗マウスIgGを用いて invivo及びinvitroで毒素処理したマウス神経筋接合部分を電子顕微鏡下で観察し、毒素分子の局在部位を検索した。その結果、神経終末外膜、膜の陥入部、シナプス小胞内および終末細胞質内に金コロイド粒子が観察され、毒素はシナプス小胞形成に伴って神経終末内へと移行し、その後細胞質内へ侵入すると考えられた。現在、モノクローナル抗体法を用いた解析で明らかになった毒素分子のフラグメントの各機能を神経終末部での局在部位を関連させて、さらに詳細に検討している。
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