研究概要 |
畑地潅漑でのインテークレートの測定時に見られるような耕地土層中への水の浸入現象では必ず浸入の転移が生起し、時間の経過につれて相異なるインテーク定数を有する一次浸入域から二次浸入域へと分化発展してゆくものであることが、今までの筆者の研究によって明らかにされて来た。 本研究では、浸入の転移時間と可測の土壌物理量との対応関係を、実験室と輪換耕地の両者での浸入測定の結果に基づいて実証的に解明した。その結果、大区画汎用耕地での畑地潅漑の計画・設計上の重要な指標となっている基準インテークレートの合理的算定法に関して有用な技術指針を作成することができた。以下に得られた結果と知見を要約して列挙する。 1.実験室での浸入実験の結果 浸入の転移時間の長短に最も強く関与する土壌物理量は、土性・土湿・土壌粗密度及び土壌空気の4要因であり、粘土含有量・土壌水分量・仮比重・封入空気圧の増加は浸入の転移の生起(従って二次浸入の出現)を遅らす。 2.整備輪換畑と新開拓畑でのインテークレートの測定調査の結果 (1)インテークレートの適正な測定時間 合理的な基準インテークレートの値を決定するために必要にして充分な測定時間は、砂壌土では1〜2時間(乾燥時),2〜3時間(湿潤時);壌土では2〜3時間(乾),5〜6時間(湿);植壌土では3〜4時間(乾),6〜7時間(湿)も要することが明確になった。これは慣行法での値に比べ著しく長時間となる。 (2)浸入の転移の生起を早める促進因子 土壌中に形成された水筋や植生の存在、畑地熟化と土壌改良に基づく土壌の団粒化の進展、耕耘・整地などの土壌管理の度合は浸入の転移時間を著しく短縮し、二次浸入域の早期出現を招くことが分った。この場合には、上述の標準測定時間は若干短縮される。
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