本研究の鍵をにぎる要点はレセルピン抗体の作成である。本研究計画の初年度において、その作成に全力を注ぎ家兎20匹において数種の抗原を用いて免疫した。しかし、予想以上に抗体産性能は低く、また特異性の点においても満足な結果は得られなかった。そこで、改めて抗原の修飾を化学的解析法により詳細に調べたところ、以下の事実が判明した。すなわち、レセルピンをハプテンとした場合、担体蛋白はウシ血清アルブミンが適している。両者の結合はグルタルアルデヒドを架橋剤として行うのが最も効率が高い。その結合に要する条件は、レセルピン/ウシ血清アルブミン/グルタルアルデヒド=4mg/10mg/100μl(25%)であり、0.1M酢酸緩衝液にて溶解しPHを4.8に調製することである。この場合にレセルピンは血清アルブミンに約4.3当量結合するものと推算される。このレセルピン-ウシ血清アルブミン複合体を50μgタンパク当量あて家兎に免疫する。その際、抗原を0.5mlの蒸留水に溶解したものを0.5mlのフロインド完全または不完全アジュバントと混合・乳化させ、家兎一匹当り1mlを数ケ所の皮下に注射する。2週毎に追加免疫を行ない、注射4日目に採血し血清の抗体価を測定する。レセルピン抗体の力価の検定は酵素免疫法で行った。すなわち、レセルピン5μM水溶液を2μl宛セルロースアセテート膜に吸着させパラホルムアルデヒド熱ガスで固定し、これと抗血清を反応させABC法で発色させた。この方法で調べると、追加免疫5回目から抗体価の検出が可能となり、以後漸増し、12回目で最高値に達した。この高力価抗体を酵素免疫法に適用することにより3p molesのレセルピンの検出が可能となった。さらに、この高力価抗体の特異性を検討するため1〜1000μMのレセルピンで吸収実験を行ったところ、10μM程度で吸収反応が認められ、遊離レセルピンを認識するハプテン抗体であることが確かめられた。
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