研究概要 |
チンパンジー,ニホンザル,カニクイザルおよびガラゴから得られた喉頭筋について、各筋の筋線維構成をヒトのそれと比較し、発声機能の相違を検討した。筋線維の分別ははSudan Black B染色によった。 結果1.ガラゴ:輪状甲状筋は一層の薄板状で、斜披裂筋および喉頭蓋筋は認められなかった。ヒトと比べて筋腹横断面積は各筋とも著しく小で、特に(横)披裂筋は劣っていたが、筋線維総数もほぼこれに近い傾向を示した。赤筋線維の比率は後輪状披裂筋では高く、(横)披裂筋と甲状披裂筋は低く、筋線維の太さは白筋線維、赤筋線維とも著しく小であった。 2.ニホンザル:輪状甲状筋は3束に、外側輪状披裂筋は2層にそれぞれ区別され、斜披裂筋および喉頭蓋筋は認められなかった。ヒトに比べて筋腹横断面積および筋線維総数は1/2から1/9程度にわたって劣り、三筋線維型の比率はヒトに近かったが、筋線維の太さは各筋とも小で、赤筋線維ではヒトとの差が著しかった。 3.チンパンジー:輪状甲状筋は2束から成り、その他はヒトと同様のものが見られた。ヒトに比べて筋腹横断面積は大か、ほぼ等しいかであったが、1【mm^2】中の筋線維数は各筋とも少なく、筋線維総数では著しく大であった。また、筋線維の比率では白筋線維が多く、赤筋線維が少ない側向が見られ、太さは3筋線維型ともヒトより大の側向が見られた。 4.以上の事から、ガラゴ,サル,チンパンジーではヒトの様に複雑で長く続く発声は困難であると考えられた。
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