研究概要 |
1.昭和60年度までの研究で明らかになった運動神経細胞上のS,F,M,C,Gf,Gs型の神経終末に関し、緊張性ニューロンと相動性ニューロンで量的相違があるかどうかを、それぞれの支配筋である前広背筋と後広背筋肉にHRPを注入し逆行性にニューロンを標識し、約8千倍の最終倍率で電顧レベルのモンタージュ写真をそれぞれ13枚形成し、シナプスの量的解析を行った。細胞体上のシナプスの解析で、全終末数に対する各型の終末数の比率を検討すると、二種のニューロン間に有意差のみられたのはGf型(PLD>ALD),S型(PLD<ALD)であり、また各終末の被覆率に関して有意差のみられたのはGf,Gs型と全被覆率でいずれもPLD>ALDであった。樹状突起上の終末に関してもほぼ同様の結果が得られた。これらの結果は、相動性運動ニューロンの方が緊張性運動ニューロンに比較して、多くの神経からの司令を受けていること、また神経ペプタイドおよび生体アミン含有終末の支配もより多く受けていることを示唆する。 2.脊髄後角は知覚に関係する領域であり、後根より入る知覚線維の一部が前角の運動ニューロンへ直接または間接的に刺激を送る通路でもある。このことから、前角運動ニューロン上のサブスタンスP(SP)含有終末の起始領域を知るための一手段として、後角第1,II層におけるSP含有構造を超微構造レベルで検討した。SP免疫活性は無髄軸索とvaricosityまたはboutonにみられ、後者は超微構造上2種に分類された。第1は小型のほぼ円い輪郭をもつboutonで前シナプス側として免疫活性を示さない樹状突起とシナプスを形成していた。第2は、大型の不規則な輪郭を持つ軸索終末で数本が束になり免疫活性を示さない5〜6個の軸索または樹状突起につつまれシナプス系球体を形成していた。中心部の軸索終末には、septate junction様の構造がみられた。
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