GABAは海馬における主要な抑制性伝達物質であり、特異的GABA合成酵素であるグルタミン酸脱炭酸酵素GADに対する抗体を用いた免疫組織化学により、GABAニューロンについての形態学的研究が進められてきた。これらGABAニューロンはその形態上いわゆる非錐体細胞と一括されている。近年多数のペプチド含有細胞が中枢神経系で発見され、海馬でもいくつかのペプチド含有細胞が報告され、これらも形態上は非錐体細胞であることが報告されていた。このような形態学的類似から、ペプチド含有ニューロンがGABAニューロンでもあるのではないかとの仮定で、ペプチドの一種であるCCKに対する抗体とGADに対する抗体を用いて免疫組織化学的手法で両者の共存について検索した。その結果、CCK含有ニューロンはすべてGABAニューロンであり、前者は後者の約10%を占めるという結果を得た。一方、特異的カルシウム結合蛋白parvalbumin(PV)は、中枢神経系ではごく特定のニューロンにしか含まれず、あるニューロン群の特異的マーカーと考えられていた。海馬においてはPV含有ニューロンはやはり非錐体細胞に属し、やはりGABAニューロンの一部であろうと予想された。PVに対する抗体とGADに対する抗体による免疫組織化学により、PV含有ニューロンはすべてGABAニューロンであり、海馬におけるGABAニューロンの約20%を占めることが明らかにできた。更に、PV含有GABAニューロンはその終末の分布から、basket cell及びaxo-axonic cellを含むことが示唆された。また、CCK含有ニューロンとPV含有ニューロンとは全く異なったニューロン群であることが明確となり、GABAニューロンが化学的性質の異なるいくつかのsubpopulationsから成るということが明らかにできた。更に同様のGABA系の構成が、大脳皮質や嗅球でも成立していることを明らかにした。
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