研究概要 |
われわれは昨年度の研究において平滑筋組織を用いてquin2からの蛍光を指標として細胞内カルシウム動態と筋機能の相関をしらべ収縮に細胞内カルシウムストアが大きく関与していることを示した(J.J.P.35,1079,'85) 今回は単離平滑筋細胞を材料とし細胞膜を通してのカルシウムの流入と細胞内ストアからの遊離の関連を細胞レベルでしらべた。単離細胞はモルモット結腸紐からコラーゲナーゼ処理によって得、この浮遊液に蛍光色素fura2AMを加え30分インキュベートして負荷する。fura2AMは細胞内で活性型のfura2となる。細胞のサスペンジョンを蛍光顕微鏡下におき、細胞1個が視野に入るように絞りを設定し、電流パルス刺激によって引起こされる蛍光変化を光電管で受け、記録した。 実験結果は刺激(10ms)によって細胞からの蛍光信号は急激に増加して1秒以内に細胞内遊離カルシウム濃度が0.1μM以下から1μM程度に上昇すること、また2秒後にはもとのレベルにもどることを示し、変化は組織片を用いた時より速かった。この変化は1mMカフェインが存在するこによって増強され、またプロカイン1mMの存在で強く抑制をうけた。 以上のことは 1)刺激に応ずる速やかなカルシウムの流入があること 2)続いて細胞内ストアカルシウムの遊離がおこること 3)直ぐに細胞内ストアへのカルシウムの取込みが始まることを示している。カルシウムによるカルシウム遊離は重大な役割を果たしていると思われる。この結論は組織でのそれと同じであった。 力学的応答は蛍光変化よりずいぶん遅れて出現し、また細胞内のカルシウム濃度がもとのレベルにもどっても弛緩しないサンプルもあった。この点は組織片での結果と異なっていた。
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