正常人脳並びにハンチントン舞踏病患者の死後脳を提供していただくことが出来なかったので、ラット脳及びウシ脳を用い、グルタミン酸作動系ニューロンを多く含む大脳皮質、線条体、海馬よりmRNAを分離抽出し、アフリカツメガエルの卵母細胞に注入し、グルタミン酸レセプターチャネルを卵母細胞膜上に誘導し、通常の微小電極法でレセプターチャネルの性質を電気生理学的に検索し下記の結果をえた。 グルタミン酸及びそのアナローグであるN-メチル-D-アスパラギン酸、キスカリン酸、及びカイニン酸は10^<-6>Mの濃度で膜電位変化を起す。多くは静止膜電位(-50〜-60mV)を脱分極の方向に変化させるが、時には過分極性の変化を示すものもある。この差が何に起因するのか不明である。 (2)mRNAは大脳皮質、線条体、海馬より抽出したがレセプターチャネルの誘導に関し脳の部位による差は認められなかった。またラット脳及びウシ脳による種の差も認められなかった。 (3)10^<-6>M〜10^<-8>Mのカイニン酸に対する反応はすべて脱分極性で、(i)投与後急速に脱分極し、そのまま数十分にわたり再分極しないもの(ii)スパイク状の脱分極及びそれに続くゆっくりしたプラトー状の脱分極よりなる反応(iii)スパイク状の電位変化のみの三種類の反応が認められた。 (4)上記三種の反応は興奮性アミノ酸の拮抗薬であるD-α-アジピン酸の、2-アミノ-4-フオスフオノブチル酸、グルタミン酸ジエチルエステル、γ-D-グルタミールグリシンの10^<-3>Mの濃度で抑制する事が出来なかった。 (5)カイニン酸に対する反応は繰返し同一の反応がおこり、感作されることはなかった。
|