研究概要 |
目的:古くから甲状腺機能低下症(粘液水腫)では、運動、感覚、高次神経活動が低下することがよく知られている。この変化はクレチン症にみられる不可逆的な神経系の発達不全とは異り、可逆的である。このような神経機能に対する甲状腺ホルモンの作用をみるために、光刺激による誘発電信の可塑性変化を研究する。 方法:体重200gのWistar系オス・ラットの甲状腺を外科的に摘除し、血中【T_4】濃度が5ng/ml以下のものを用いた。摘除3〜11週後に実験に用い、甲状腺ホルモン(【T_4】)の補充は、0.1mg/kgを隔日に注射した。ネンブタール麻酔下にラットを脳定位固定装置に固定し、クセノン光刺激を与えた(2ジュール,25cm,5秒間隔)。誘発電位は大脳皮質視覚電(Bragma-8.5〜9.5,l3.0,d0.2〜0.5mm),外側膝状体(LGB)から測定した。結果と考察:工 視覚重における変化 正常ラットの第1次誘発電位の潜時は27.7±0.73(m±SE,n=フ)msecであったが、甲摘ラットでは34.7±1.66msec(6)と28.0%の延長をました。【T_4】補充後2日には正常レベルに回復した。【T_3】(0.05mg/kg)の補充の場合は僅か1日後には正常に回復した。II:LGBにおける変化 LGBにおける第1次誘発電位の変化は視覚電における変化と類似しており、正常ラットの潜時は23.4±0.1(7)であり、甲摘後30.2±2.93(4)msecと延長した。(29.1%)。【T_4】補充2日後には正常レベルに回復した。同一ラットで視覚電とLGBの両方から測定した潜時の差(LGB-視覚電)は3.64±0.68(+)と5.03±1.86(4)と延長(+38.2%)をましたので、網膜視細胞-LGB,LGB-視覚電錐体細胞の両径路において、〓〓の伝達と伝導のスピードは同じ程度で甲状腺ホルモンに依存していることが明らかとなった。また【T_3】補充効果の出現は著しく速やかで、投与24時間後にすでにみられたことは興味深い。またこれに対応する視床下部・正中隆起ソマトスタチンも敏感に変化した。
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