本研究の目的は(1)薬物弁別学習を用いての抗痴呆薬Ca-hopantenate(hopate)の作用機序の解明と(2)短期記憶に焦点をあてその定量的測定法を検討し抗痴呆薬の前臨床的評価法を確立せんとした。 1.Wistar系ratでhopate500mg/kgとsalineとの弁別学習を2-lever operant boxを用いて試みた。弁別学習は約80sessionで完成した。般化試験(generalizationtest)ではaminooxyacetic acid(3.2mg/kg)およびmusimol(1mg/kg)はhopateに部分般化し、GABA前駆物質picol nayl GABA(320mg/kg)は完全般化した。physostigmine(1mg/kg)はhopateに部分般化し、またhopate弁別刺激はatropineにより部分拮抗された。これらの事よりhopate弁別刺激効果はcholinergicおよびGABAergic activationに基づくことが示唆された。 2.hill's runway装置は4つの関門に、それぞれ3つのblack pannel gateが装着されている。3つのpannel gateの内1つだけ通過可能にし、1日6trial(1session)訓練した。通過可能なpannel gateの配列は毎日異なるようにし、同一session内では同一課題を用いた。4-lever operant装置はpannel後方に移動可能な4つのleverとfood-dispenserが装着されている。leverを押すと強化として餌が得られる条件下に(FR3)、1 lever表示のtrainng traialとTraining trialと同一leverをcorrect leverとする4-lever表示のtest trialを1 trialとして毎日交互に15trial訓練した。いずれの学習記憶も抗コリン作動性薬物によって障害され、その障害はhopateによって改善される傾向にあった。 以上、本実験により1)hopate弁別刺激にはcholinergicおよびGABA ergic activationが関与していること、また2)hill's runway装置および4-lever operant装置を用いる学習記憶方法は短期記憶の程度を定量的に測定可能であり、抗痴呆薬の新しい前臨床的評価法として期待されることが明らかになった。
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