高脂血庄、肥満などの循環器病の成因となる脂質代謝異常症の治療と予防のため、脂質の主構成成分である脂肪酸の生合成調節機構の研究を行った。脂肪酸生成合の調節は、これまでの研究からアセチルCoAカルボキシラーゼ(以下ACCと略)を介して行れることが明かになっている。今回、我々はACCの酵素量を決定する要因となっている、ACCの分解機構の研究を行い、更にACCの活性調節機構を明かにするため、酵素の1次構造の解明を試みた。これらの研究の結果以下に述べる成果を得た。 1。ACCの分解機構は全く研究されていなかったので、鶏肝より精製したACCに、同じく鶏肝より調製したリソゾーム抽出物をホスホセルロースで分画した標品を作用させACCの分解を調べた。カテプシンL、Bと不明のプロテアーゼによって分解が認められたが、ほとんどの分解はカテプシンLに依存した。これまで鶏カテプシンLに関する報告はなかったため、精製し性質を明かにした。動物のものと性質は近く、そのアミノ酸配列は植物の蛋白分解酵素に近かった。 2。ビオチン酵素であるACCは高等動物では分子量が22-26万の巨大な蛋白で、その構造は全く不明であった。細胞内含量は低いため、遺伝子工学的手法を用いて決定することにした。鶏肝より岡山-Berg法に従いcDNAライブラリーを作成した。一方精製鶏肝ACCを酵素的に切断し高速液体クロマトグラフィーによりペプチドを精製した。得られたペプチドを気相プロテインシークエンサーで構造決定した。これらの構造に相当するオリゴヌクレオチドを化学合成し、プローブとして上記のライブラリーを検索した。6×【10^5】の変異株から1個のACCに対するcDNAを有するプラスミドを得た。このプラスミドの核酸配列からビオチン酵素に特有なビオチン結合部位の配列Met-Lys-Metを見出した。現在核酸から全アミノ酸配列を決定中である。
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