研究概要 |
血小板活性化の細胞内情報伝達経路においてCキナーゼによる47K蛋白質(P47:西塚による40K)のリン酸化反応は重要な位置を占める。このCキナーゼの生理作用発現の場である基質蛋白質の本体と機能の早急な解明が望まれている。我々は、ヒト血小板より著者とHaslamの方法(J.Biol.Chem.258,11404)に従ってリン酸化型および非リン酸化型P47を均質にした。ゲルろ過及びショ糖密度勾配の結果より算出した分子量は49Kで、SDS・PAGEの47Kに近似していた。2次元に展開すると非リン酸化型P47はPH6.6-6.8の領域に3-4個、リン酸化型はPH6.2-6.5の領域に7-9個のスポットを持つmicroheterogeneityを示した。一方、血小板膜分画よりCキナーゼを均質にしてinvitroリン酸化反応を検討すると、外因性基質ヒストンでは【Ca^(2+)】,DG,PSの相乗効果を認めたが、内因性基質P47ではDGの効果を認めずPS濃度依存性に反応は促進された。このことは外因性基質と内因性基質ではリン脂質特にDGの効果が極めて異なることを示していた。また、P5Iラベル非リン酸化P47は血小板膜結合性を有し、PSの添加は毛の結合を増強した。この非リン酸化P47は血小板のアクチン重合をモル比1:8で阻害し、リン酸化P47では毛の作用を認めなかった これらの結果は、静止血小板ではP47は細胞膜内面に結合し、アクチンの重合を抑制しており、刺激にともなってCキナーゼによりP47がリン酸化を受けるとこの阻害効果を失ない、細胞内骨格蛋白質の収縮を促して顆粒の中心化・分泌反応に導くものと考えられた。以上の結果は、国外でも著者所属のFederation of American Societies for Experimental Biologyでも討議され、ブラッセルの国際止血・血栓学会でHaslamによって教育講演される。また一連の仕事により著者はThe New York Academy of Sciencesの一員に列せられた。
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