B細胞性びまん性中細胞型リンパ腫で、いわゆるMantlezone Lymphomaの生検材料より、リンパ節T領域の間質細胞の長期培養系、SG細胞を得た。この壁附着性樹状突起細胞の特徴については、60年度研究報告に記載した。SG株細胞をBALL株細胞、自己末稍血Bリンパ球と共に培養すると、Bリンパ球がSG細胞とシャーレ壁の間にもぐり込む、いわゆる偽エンペリポレーシス現象が著明に認められた。一部のBリンパ球はSG細胞表面に附着するが、その数は少い。一方、TALL株細胞や自己末稍血Tリンパ球では、SG細胞表面への附着が著明に認められるが、偽エンペリポレーシスはほとんど認められなかった。HL60細胞では、いずれの現象も生ぜず、別個に樹立されたヒト骨髄間質細胞株とTALL又はBALLの混合培養系でも、これらの現象は観察されなかった。リンパ球とリンパ節間質細胞との上記の特異的反應は、ヘパリンによって用量依存的に抑制されるので、両者の接觸、附着には、細胞表面のadhesion moleculeが関与しているものと思われた。両種細胞の接着が機能的な意味を持つかどうかについて、dye transfer testを行ったところ、稀れにではあるがSG細胞に注入されたLuciferイエロー色素が、接着Bリンパ球に移行する所見を得た。即ち、両細胞間にgap junctionの形成が示唆された。次で、接着リンパ球の増殖に対する影響を、【^3H】チミジンの取込みで検討した。両細胞の混合培養3日目に、浮遊細胞と偽エンペリポレーシスないし表面附着でSG細胞に接着したリンパ球を分離し、ミリポアフィルターで両群を融離した上、更に3日間混合培養を行い、【3^H】チミジンの標識を行った。SG細胞や浮遊リンパ球には標識がみられたが、SG細胞に接着するT・Bリンパ球には、まったく標識がみられず、間質細胞との直接接觸で、リンパ球の増殖が抑制されることが明らかとなった。
|