研究概要 |
リンパ球の分化・増殖に及ぼすリンパ節間質細胞の影響を, in situおよびin vitroの系で解析した. In situの研究には, 炎症性・腫瘍性疾患で生検されたヒト・リンパ節の電顕的, 免疫組織学的検索を行った. Bリンパ球増殖単位であるリンパ濾胞について, 正常反応性濾胞と, 濾胞性リンパ腫の腫瘍性濾胞での細胞構築の相似を明らかにした. DRC-1陽性の濾胞樹状細網細胞の存在とその機能保持が, Bリンパ球の濾胞状増殖形態の維持に必要であると推測された. 又, TBリンパ球の浸潤, 各種間質細胞の出現が, 悪性リンパ腫の予後と相関する因子である示唆を得た. OKT-6陽性ランゲルハンス細胞とヘルパーT細胞の同所性分布は, 炎症でも腫瘍でも認められ, 両者の機能的相関を裏づけた. In vitroの解析のため, 各種間質細胞の分離, 培養を試みた. 濾胞樹状細胞の培養には成功しなかったが, mantle zoneリンパ腫の1例より, SG細胞と呼ぶT領域間質細胞株を樹立した. SG細胞は壁附着性の樹状細胞で貧食能よわく, MHC-1.2, ^<(+)>OKM1, ^<(-)>OKM5, ^<(-)>Mac-1^<(-)>, で5'-Nase, AcPise, Esteraseが陽性で, 上田竜三氏作製のT領域間質細胞の抗体ST-1で陽性であった. SG細胞はリンパ球とのみ細胞接着を生じ, 特上Bリンパ球(BALL及び本人B細胞)は著明な偽エンペリポレシス現象を起こす. 接着はヘパリンで抑制され, Lucifer yellow注入で低頻度ながら, gap junction形成が示唆された. SG細胞は接着するTBリンパ球の^3HTdR取込みを阻止するが, 浮遊Tリンパ球(TALL細胞)の^3HTdR取込み促進因子を分泌する. 以上の研究結果より, リンパ節間質細胞が, リンパ節におけるリンパ球の増殖や成熟・分化に関与していることは明らかと思われる. 特にSG細胞の接着リンパ球増殖阻止は, 免疫刺戟によるリンパ球増殖の抑制因子として重要と思われる.
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