研究概要 |
当該年度(昭和61年度)の研究内容とその成果は以下の如くである。 1.In Vivoでのシュワン細胞増殖病変の作製 生後21日令ラットを1.5%テルル含有飼料で飼育した。飼育3〜4日で坐骨神経は高度の節性脱髄に陥り、4〜7日で病変部にシュワン細胞の増殖が確認され、これを次の実験に用いた。 2.脱髄後のシュワン細胞増殖期坐骨神経の培養 上の結果から、テルル食5日ラットの坐骨神経を摘出し、長さ1mmに細切、初年度と同様のプラスチックシャーレ法で、″標準液″を用い、1日置きの液交換で培養した。非テルル食同日令ラット坐骨神経を対照とした。 その結果、遊出・増殖細胞は両群とも線維芽細胞が優勢であったが、シュワン細胞に関しては、培養3日頃までテルル食群が非テルル食群に比して、優勢な増殖を示した。 3.坐骨神経培養濾液の分離培養シュワン細胞に及ぼす効果 上記坐骨神経の培養1,3,5,7日後の培養液を採取、0.2μのフィルターで濾過後、各濾液を分離培養中のシュワン細胞に添加した。添加後8日又は9日まで経過を追い、シュワン細胞の増殖状態を位相差像撮影写真上で検討した。その結果、各濾液添加群の殆どで種々の程度に細胞増殖をみたが、特に、テルル食坐骨神経培養1日濾液添加群は全経過中最高値(最大値は添加前に比し195%の細胞数)を示した。次いで非テルル食培養1日濾液添加群(最大値137%)、他はテルル食群を含めより低値に止まった。 以上、テルル病変神経をモデルに、そのシュワン細胞増殖期に増殖因子を産生あるいは含有している可能性を示し得たが、in vitroでの本因子の持続的保持・産生は困難と考えられた。
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