研究概要 |
1.非白血病性腫瘍細胞の表面に存在するRNAの種類を明らかにする目的で, 二種類のマウス腹水型非血病性性腫瘍細胞(エールリッヒ癌, 及び, サルコーマ180)及び, そのコントロールとして, 細胞表面にRNAの存在しない二種類のマウス腹水型白血病性細胞を(L1210, 及び, C1498)について, 細胞表面を軽くプロナーゼ処理して得た上清中のRNAを, 庶糖密度勾配遠心法により解析した. その結果, エールリッヒ癌細胞とサルコーマ180細胞をプロナーゼ処理した上清中にはRNAが抽出され, リボゾーマルRNA(r-RNA)量が, プロナーゼ非処理細胞に比べて約80%多く抽出された. しかしL1210細胞とC1498細胞をプロナーゼ処理した上清中には, プロナーゼ非処理細胞にくらべて, RNAの遊離量に増大は認められなかった. これらの結果から, 非白血病性腫瘍細胞の表面に存在するRNAは, 主に, r-RNAであることが示唆された. 2.非白血病性腫瘍細胞の表面に存在するRNA(r-RNA)の分布状態とその構造を明らかにする目的で, エールリッヒ癌細胞, 及び, そのコントロールとしてL1210細胞について, 細胞表面超微形態をプラズマ重合レプリカ膜法, 及び超薄切片法を用いて観察した. すなわち, 細胞を先ずウサギ抗RNA抗体と, 次ぎに, 金コロイド結合抗ウサギ抗体と4°Cで反応させ, 細胞表面のRNAを金コロイド粒子でラベルした. その細胞表面のレプリカ膜を電子顕微鏡を用いて観察した結果, エールリッヒ癌細胞にのみ, 細胞表面に金コロイド粒子の集合個所を認め, また, その個所に紐状の構造物を認めた. 超薄切片法を用いた観察では, エールリッヒ癌細胞の表面に, 抗RNA抗体の結合するリボゾーム様構造体を見いだした. これらの結果から, 非白血病性腫瘍細胞の表面に存在するRNAは, リボゾーム様構造体をもつことが示唆された.
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